フィーネ そして ありがとう 越谷市の不動産ジャストホーム

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2023年10月17日

フィーネ そして ありがとう

本日営業よりアップします。

仕事を終えて帰宅すると7時のニュースを見ます。ウクライナ問題にパレスチナ問題、世界がとてもまずい方向に向かっていることに安穏とはしていられません。昨日は加えて、悲しいニュースを突きつけられ、なんとも寂しい気持ちになりました。私は、ある情景を思い出していました。それは雨の高速道路を走る風景です。ワイパーが激しく左右に振れて雨を弾き飛ばしています。10も年の離れた兄が運転するちょっとやんちゃなブルーバードの助手席に、小学生の自分は特に会話をすることもなく座っています。小さな自分はとりまく音に耳を澄ましています。・・・

少し詳しく書きます。

すでに就職していた兄は、たまに実家に帰ってきては幼い弟の遊び相手になってくれました。その日は鈴鹿サーキットでスーパーカーレースが開催される予定になっていました。私はかねてからこのレースを見たいと親にねだっていました。しかし車を運転できない母親には無理な相談で、連れて行ってもらえるかどうかはわかりませんでした。そんな時に、兄が帰ってきました。母と何かやりとりした兄は「じゃあ見に行こう」と言って、駄々をこねる自分を車に乗せて出発しました。サーキットに行くには、名阪国道という”高速道路”に乗ります。高速道路と書きましたが、正確には自動車専用道路で、無料の道路です。地元の人は高速道路のようにここを走ります。

車に乗り込むと、カーステレオからは「つむじ風」という曲がながれ始めました。レースを見ることができると思った自分はわくわくしていました。もうこの曲のリズムのように。

ただ、ちょっと気になることがありました。はたして入場券はあるのだろうか? 兄に聞いてみました「チケットはあるの? 」

でも兄ははっきりとは答えてくれません。なんとかなるんじゃないかということを繰り返します。

兄がそう言うならそうかもしれない。でもチケットがないと入れないと書いてあったような・・・

ティンバレスを打つ特徴的なドラムスのイントロでハッとしました。「冬の稲妻」という曲が始まりました。大好きな曲でした。歌うのはちょっとむずかしい曲でした。やがて峠を越えるころ、激しい雨が降り始めてきました。(これが冒頭のシーンです)

激しく車体に打ち付ける雨音と「冬の稲妻」・・・今から思うとこれは私だけの個人的な音楽体験でした。

しばらくして兄が言います。「雨だからレースは中止だろう。このままドライブしようか」

そういうことか。子どもながらに、最初からチケットはなかったということは分かりました。ああ、スーパーカーレースは見られない・・・。自分は落胆しました。でも兄に文句を言うことはしませんでした。何だか大人気ない気がしたからです。

曲は「フィーネ」に変わりました。静かで静かでそして悲しい曲です。私はこの曲に浸りました。曲が終わった後も、カセットテープからは無音の音が流れ続けます。その無音の音さえなんだか心地よかったです。

兄がかけていたのは「ALICE Ⅵ」というアルバムでした。私はこのレコードを、兄が残していったステレオですでに何度も聞いていました。ただ、自分の気持ちを音楽に投影させた経験はこれが初めてだったように思うのです。この時以来、あなたの音楽を聴くたびに激しい雨音が耳の奥で鳴っていました。

チンペイさん! 貴重な音楽経験を、ありがとう!  合掌

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