本日、営業よりアップします。
新築住宅のお引き渡しが済んでしばらくすると、いよいよお引っ越しとなります。
荷造りも含め一切合切やってくれる引っ越しサービスをあえて使わず、ダンボール箱をかき集め、いるものといらないものを時間をかけて選別し、箱に詰め込む作業は、楽しいものです。生活がグレードアップする引っ越しであれば尚更です。学生時代の6畳一間の下宿から、就職して2DKのアパートに、さらに結婚して2LDKのマンションを経て、子供が生まれたのを契機に新築の一戸建てへ・・・最初の引っ越しは赤帽の軽4トラックで済んだのに、荷物もだんだん増えて、大型トラックが必要になって・・・私は引っ越しの風景が大好きです。
個人的にはこれまでに14回の引越しを経験しました。
O村 → I町① →I町② → S区 →N区 → S区 →K市 → H市 →Y市① → Y市② →H市② → F市 → M町① → S市 → M町②
引越し業者の人から褒められたことがあります。段ボール箱の重さがどれもほとんど同じだったからです。引っ越しに不慣れな人は、箱にたとえば本だけを詰め込んでしまいます。これでは重くなって腰を痛めます。半分くらい本を詰め込んだら残り半分には衣類を詰めます。そうすれば程よい重さになります。人にやさしい荷造りというのがあるんですね。
私事になりますが、先日、職場から500キロほど離れた、母の住む実家をたたむ現場に立ち会いました。母が50年住んだ家です。私は高3まで12年間住んだ家です。
ひとつだけ気がかりなことがありました。それは、私が高3まで使っていた頑丈な木の机には鍵のかかる引き出しが付いていたのですが、その鍵を紛失してしまったのです。中にはとても人には見せられないものが入っているはずだったのですが、それがなんなのかすら分からなくなっていました。分からなくなってしまったけれど、誰にも見せられないようなものが入っていることだけは、感覚として覚えていて、気になっていたのです。先日、バールで鍵穴をこじ開け、引出しの中身を救出しました。それは、想像以上に驚愕の品々でした。突然18歳の頃の忘れ去っていた過去の自分に出会ってしまったのです。タイムカプセルを開けてしまったのです。こんな経験は滅多にあるものではありません。
まず、最初に目に飛び込んで来たのがこれでした!
告白しますが、私は高2の頃彼女の写真集を買っています。このブロマイド風のものは、当時大々的に売り出された小学館の昭和文学全集のキャンペーングッズです。
この他に、日記が3冊、シェイクスピアのソネットを書き写したノート一冊、読書感想文2年分、一級上の先輩に宛てたラブレターの下書き2パターン、地元の新聞社に取材された記事の切り抜きなどが出てきました。どうやら私が絶対に人には見せられないと思っていたのは、この日記とラブレターの下書きだったようです。その夜、感傷に浸りながら爆風スランプの「大きな玉ねぎの下で」を聴いたことを付け加えておきます。
それにしても、古い家ですね。それになんとも「桜の園」的です。
そう、引っ越しというのはいつだって「桜の園」的なんです。ただ、過去との訣別と未来への出発・・・どちらに重きを置くかで人それぞれ、意味合いは変わってきます。悲劇ともなれば喜劇ともなります。50年住んだ家を離れることになった私の母はどちらだったのでしょう。最後に母は、部屋のひとつひとつを訪れて「50年ありがとう、お世話になりました」と唱えながら合掌していました。その表情は悲壮なものというよりはむしろさばさばしたものでした。