本日、営業よりアップします。
この間、ガラスのお皿を割ってしまいました。17年ほど前に表参道の雑貨屋で購入したちょっとお気に入りのお皿でした。高価なものではありませんでしたが、割と丈夫で、複雑な模様が特徴でした。形あるものはいつかは壊れます。とはいえ物に張り付いた記憶というやつは簡単には剥がせないものですね。
ガラスのお皿を割った二日後、偶然立ち寄った本屋で面白い本に出会いました。
『想い出の昭和型板ガラス』という本です。”消えゆくレトロガラスをめぐる24の物語”という副題がついています。迷わず購入してしまいました。自分にとって必要な本かどうかは直感でわかります。
「昔の家」に数多く使われていた型板ガラスはもうほとんど生産されていません。ですから昔を知っている人にとっては型板ガラスはノスタルジーの対象です。しかし若い世代には、むしろ新鮮にすら映るのが型板ガラスです。そんなこんなで、昭和初期から中期にかけて流通していた型板ガラスは、一部で密かなブームとなっているらしいのです。
この本は型板ガラスの図鑑にもなっていて、60種類のデザインガラスの模様と名前を確認することができます。本家にも実家にも型板ガラスは使われていました。歯医者の窓にも、公民館にも、どこにでも型板ガラスはありました。図版を見ながら、不思議な感情が蘇ってきました。「いしがき」「銀河」「つた」「わかば」「サーキット」「アラビアン」・・・もちろん子どもの頃の自分がそんな名前を知っているはずがありませんが、その模様はしっかり覚えていました。
かくれんぼをしている時、見つけられるまでのしばしの間、部屋の隅でじっとしながら、窓を何気なく眺めます。そんな時型板ガラスの連続する模様を目でなぞったりしていたものです。雨が降っている時は、窓の外につたう雨滴を目で追います。そんな時、ガラスの凹凸のデザインが脳に刻まれたのでしょう。
ああ、この本と1年前に出会っていたら(先月出版されたばかりの本なので無理な話ですが)実家を取り壊す前に、ガラスを”救出”していたのに・・・。とっても悔やまれます。