パスタ好きの営業より本日アップします。
先の休日、私と妻は午前中それぞれやることがあって、昼食をゆっくり作る時間がありませんでした。だからいわゆる「かけるパスタ」で簡単に、となりました。
妻「アラビアータとボロネーゼどっちがいい?」
「じゃあ、アラビアータで」と即座に答えようとして、はたと口よどんでしまいました。待て待て、この妻の質問に即座に答えていいものだろうか。確かに僕は今、パスタと聞いてイタリアンパセリの風味を思い浮かべアラビアータ一色だが、妻は基本的に辛い物が好きで、自分だけのタバスコを冷蔵庫に持っているくらいだから、きっとひき肉たっぷりのボロネーゼよりピリッと辛めのアラビアータを選ぶんじゃないだろうか。するとメニューがかぶってしまう。ここは慎重にならないといけないぞ。前回もハーゲンダッツを食べる時「バニラとラムレーズンどっちがいい?」と聞いてきた。僕はいつもラムレーズンを食べるんだけど、その日はバニラが食べたかったので「バニラ」と答えたら、「え、ラムレーズンじゃないの」とちょっと不満げだ。どうやら、僕は選択を間違ったらしい。妻はバニラが食べたかったのだ。さて、今日はパスタだ。答えはどっちだ。どうしてアラビアータを二つ買わなかったのだろう、最初からアラビアータだけにしておけば何の問題も起こらないのにと脳内で呟きながら、意を決して、欲望の命じるままに、「アラビアータで」と言いきってみる。間違ったっていい、僕は今アラビアータが食べたいんだから、と自分を鼓舞しながら。すると妻は「オッケ―!」とにこやかに笑い、レトルトパウチを鍋に突っ込んだ。なんだ、当ってたのか・・・。
くだらない日常のひとコマですが、このとき僕は昔見た『ジョンとメリー』という映画を思い出していました。
『ジョンとメリー』はダスティン・ホフマンとミア・ファロウの出ていた1969年の映画です。半世紀以上も前の映画で、もちろん映画館で見たわけではありません。内容を40字程度に要約すると「一夜を共にした若い男女がお互いの名前を教えあうまでの24時間を描いた恋愛物語」(37字)です。名前も知らない相手に警戒し気を遣いながら、会話を通じて相手を知ろうとしたり、分析したり、自分を表現したり、時には離れようとする相手の気を引こうとしたり・・・要するに心理的な駆け引きが演じられるのです。実際の会話の科白より心の中の独白が中心となって、不思議に緊迫感のある映画でした。いちどは部屋を出ようとするミア・ファロウを引き留めようとしてレコードをかけるシーンがあるのですが、その時ダスティン・ホフマンがコレクションの中から取り出したレコードがブラスバンドのレコードなんですよね。なぜ金管楽器で女性の気を引こうとするのか、若かりし自分はやきもきしたものです。(今ならわかります。アメリカのロックバンドであるシカゴが、ロック音楽に金管楽器を多用しブラスロックの先駆者となった時期と重なるのです。当時の雰囲気です。)
ただ、この映画はいろいろな見方のできる映画でして、ダスティン・ホフマンの演じる男はインテリアデザイナーということもあり、部屋のデザイン・使われている家具や家電製品、食器など、当時としてもハイセンスな仕様になっているのです。
とくに印象に残るのは部屋の白さでしょうか。なんとも素敵なんですよね。塗りムラですらお洒落に感じられて。60年代後半のにおいがプンプンします。それにコーヒーを淹れるシーンで、漏斗とフラスコのような外観のコーヒーメーカーが出てきます。のちにそれがケメックス社のものと知るわけですが、格好いいなと思ったものです。
これはキッチンです。
ダスティン・ホフマンがキッチンに立つと、テニスラケットでパスタの湯切りをするんじゃないかと思ってしまいますが、それは『クレ-マークレーマー』ですね。
さて、まくらだけで終わる談志の落語みたいになってしまいましたが、映画やドラマの中にも家づくりのヒントは転がっているという強引な締めで本日は失礼いたします。お後がよろしいようで・・。