走るときは音楽を聴かない営業より本日はアップします。呼吸の音やシューズが地面に着地する規則的な音の連なりが心地よいと思うからです。
つかみどころのない未知のものには不安と恐怖を抱きますが、ひとたび正体がはっきりして名前がつけられると、とたんに安心するものです。夜中に理由もなくガサっと音がしたりすると不安で眠れませんが、それが座敷童の仕業だとわかるとそれほど怖くはありません。
さて、人間にはさまざまな嗜好というものがあって、特定の映像を見たり音を聞いたりすると、脳が奇妙な心地よさを感じたり、ゾワゾワする感覚を得られたりします。たとえばコップに炭酸水を注いだときのシュワシュワ音とか、サクサクの揚げ物の衣をかじる音、排水口に大量の水が吸い込まれていく映像とか、海岸に波が打ち寄せ引いていく映像、こうしたものは、個人差はあれ、ずっと聞いていたいし、見ていたくなります。脳がいい具合に刺激されているわけです。こうした反応のことを、ジェニファー・アレンというアメリカ人はASMRと命名しました。日本語に訳すと「自律感覚絶頂反応」というそうです。さあ、名前がつけられたので、多くの人が、自分だけの嗜好性に気づきはじめます。今やネットで検索すればAMSR動画などを容易に見つけることができます。耳かき音とかささやき音なんてのもありますね。私は画家が黙々と絵を描いている映像が好きです。
ASMRは聴覚と視覚の面で語られることが多いですが、触覚なども含めると、もう人の数だけASMRがあると言ってもいいんじゃないでしょうか。片栗粉を触ったときの奇妙な心地よさとか口の中でイクラをプツッとつぶすときのあの感触の虜になる人は案外たくさんいるのです。(正反対の反応を見せる人もいます。片栗粉の触覚を極度に嫌う片栗粉恐怖症というのがありますし、イクラのように小さな粒々の集合体を嫌うトライポフォビアという症状もあります。)
私がASMRという言葉を知ったとき、真っ先に頭に浮かんだのは20年ほど前の「アメリ」というフランス映画でした。この愛すべき映画のなかにASMRのトリガーはもう無数に散らばっていて、いろいろな角度から脳がくすぐられます。
クリームブリュレの表面をスプーンで割るシーンなどは音が触覚を呼び覚まします。
豆袋の中に指を突っ込むシーンには仲間意識すら芽生えました。同じことをお米でやったりしませんでしたか?
アメリといえば、赤い部屋が印象的でした。この映画は見どころ満載で古いアパルトマンの壁紙に注目するだけでも十分楽しめます。
そうそう壁紙で思いついたのですが、先日ピンタレストで壁紙を検索していて面白いことに気がつきました。アクセントクロスについて調べていたのです。
まず検索窓に「アクセントクロス」と打ち込んでみると次のような画像が表示されました。素敵です。真似したくなるようなアイデアがいっぱいです。
次に、外国ではどんな風だろうと思って「accent wallpaper」と打ち込んでみました。するとこんな結果が出ました。
いかがですか? 日本ではアクセントクロスは無地、外国ではアクセントクロスは柄物、これほどはっきり違いが出るとは思いませんでした。国民性でしょうか、とても興味深く思いました。
主張の強い柄の壁紙を採用するのは勇気と覚悟がいります。使ってしまえば結構しっくりくるものなのですが、ちょっと身構えてしまいますよね。私は今度わが家の寝室の壁紙を新調するときは、アンリ・ルソーが描くような葉っぱや植物を題材にした壁紙を使いたいなと思っています。
ちなみに、強い柄の壁紙の場合、部屋を暗くするのがポイントです。アメリの部屋も暗いですよね。日本の室内は少し明るすぎるのかもしれません。